身体や精神に障がいを抱えている方の自立に向けて支援が受けられる障がい者グループホーム。

「障がい者グループホームって何?」

「入居条件や費用は?」

「利用のメリットとデメリットは?」

本記事では、これらのお悩みに対して障がい者グループホームについて詳しく解説していきます。

障がい者グループホームとは?

障がい者グループホームとは、障がい者が将来的に自立した生活が送れるように支援する障害福祉サービスのことをいいます。

障がい者が日常生活を送るうえで、食事や入浴をはじめ、周りとの交流が上手くできないといった困難があるかもしれません。

障がい者グループホームの目的は、障がい者と職員とともに共同生活を送ることで、支障を乗りこえる術を身につけるための基盤作りです。

障がい者グループホームの職員は、障がい者の食事や入浴時の介護はもちろん、他者との交流を通じたコミュニケーションの手助けも行います。

障がい者の方たちにとってグループホームの存在は、これからの人生を楽しむ架け橋になるでしょう。

障がい者グループホームの入居条件

障がい者が自立支援を受けるためには、障がい者グループホームの入居条件を満たさなければなりません。また、障がいの程度によっては入居ができない場合も。


障がい者グループホームへの入居条件は以下の3つを満たさなければなりません。

  • 障害者総合支援法の規定に該当する方
  • 障害者手帳が交付されている方
  • 障害支援区分の1~6に認定されている方  

ただし、入居条件は障がい者グループホームによって異なるので、事前に相談支援専門員やお住まいの市町村にある障害福祉課で確認しておきましょう。

入居条件について、それぞれ順番に解説していきます。

障害者総合支援法の規定に該当する方

障がい者グループホームの入居対象者は、以下の障害者総合支援法に規定されている障害に該当する方になります。

  • 知的障害
  • 身体障害
  • 精神障害
  • 難病患者

障がい者グループホームの入居に関しては、自治体への申請は必要ありませんが、事前に障害者手帳の交付や障害者支援区分の認定調査を受けなければなりません。

障がい者グループホームによって対象となる障がいの種類や障害者支援区分が異なるため、入居の際には注意が必要です。

障害者総合支援法について

障害者総合支援法とは「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」と定義されています。<出典:厚生労働省>

改正される前の障害者自立支援法では、「知的障害」「身体障害」「精神障害」が自立支援の対象でしたが、改正後は「難病患者」も対象に。

また、「難病患者」とは厚生労働省が定めた361疫病が対象となります(令和元年7月1日より適用)。<出典:厚生労働省>

障害者手帳を交付されている方

障がい者グループホームに入居するためには、以下のいずれかに該当する障がい者手帳が必要です。

  • 身体障害者手帳
  • 精神障害者保健福祉手帳
  • 療育手帳

障害者手帳は、自治体に申請すると交付ができます。

中には交付までに更新などで時間がかかる場合もありますので、障がい者グループホームへの入居を考えているなら早めに手続きを済ませておきましょう。

障害支援区分の1~6に認定されている方

障がい者グループホームなど社会福祉サービスを受けるためには、原則、障害者総合支援法で定められた障害支援区分の1~6に認定されていなければなりません。

区分無しでも受給者証で共同生活援助支給決定が出ている場合はOKです。

認定されるためには以下の調査が行われます。

  • 80項目の身体や内面状態についての聞き取り
  • 医師による24項目の指示書
  • 市町村審査会で審査

障害支援区分の数字が高くなるほど、度合いに応じた支援が必要に。

障がい者グループホームにおいては本人の支援計画を立てるための判断材料になります。

障がい者グループホームの利用にかかる費用

障がい者グループホームに入居するにあたって、施設の利用にかかる費用も気になるでしょう。障害福祉サービスを利用する際に、基本的に利用料の1割を利用者が負担しなければなりません。

主に以下の2種類の費用がかかるとされています。

  • 障がい者グループホームの利用料
  • 利用中にかかる費用(食費・光熱費など)

ただし、利用者本人と配偶者の所得に応じて負担上限額まで減額される場合も。減額の条件において、本人の両親や親族の所得や、本人が所持する資産や預金額は関係ありません。

費用の詳細については次のとおりに解説しています。

障がい者グループホームにおける負担上限額

障がい者グループホームにおける負担上限額を区分や世帯の収入状況に分けて、以下の表にまとめています。

世帯の範囲については以下のとおりです。

  • 18歳以上の障害者の場合:障害者本人とその配偶者
  • 18歳未満の障害児の場合:住民基本台帳に保護者が属する世帯

こちらを参考に現状とあてはめてみてください。

区分 負担上限額 世帯の収入状況 その他条件

生活保護

0円 生活保護受給世帯 ・障害者手帳と障害福祉サービス受給者証が必要。
低所得 0円 市町村民税非課税世帯 ・3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が300万円以下の世帯が対象。
一般① 9,300円 市町村民税課税世帯 ・収入が600万円以下の世帯が対象。
・入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は除く。
一般② 37,200円 上記以外の世帯 ・入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者で、市町村民税課税世帯の場合は適用。

<出典:厚生労働省>

生活保護受給者の入居条件と自己負担額について

現在、生活保護を受けている方も以下の提出物をそろえてあれば、障がい者グループホームへの入居が可能です。

  • 障害者手帳
  • 障害福祉サービス受給者証(障害支援区分が記載)

お持ちでなければ、居住地の自治体で申請しておきましょう。

また、居住地に入居可能な障がい者グループホームが見つからない場合は、他の地域で入居ができます。その場合は、住民票を入居と同時に移しておくことがおすすめです。

なぜなら、生活保護の受給は住民票がある自治体になるので、サービスの受給手続きする際に手間がかからずに済みます。

さらに、障がい者グループホームを利用する生活保護受給者には月額1万円が上限の家賃補助も。家賃補助の範囲内で収まれば、自己負担額は0円になります。

障がい者グループホームの利用中に必要な費用とは?

障がい者グループホームでは共同生活を行うので、各個人で家賃や光熱費などが必要になります。中には入居時に保証金を預かるところも。

以下のような費用相場が目安です。

  • 家賃:2~4万円未満
  • 食費:2~3万円
  • 光熱費:1~2万円
  • 日用品など雑費:数千円~1万円

生活保護受給者と低所得に区分される方は負担上限額が0円と定められているので、受給範囲を超えない限りは自己負担はありません。

また、一般①と一般②に区分される方については、共同生活で自己負担しなければならない費用が発生するので、よく確認しておきましょう。

障がい者グループホーム利用のメリット・デメリットとは?

障がい者グループホームで自立支援を受けながら共同生活を送る利用者の中には、家族から離れて暮らす人もいます。しかし、親や家族と暮らすと、どうしても甘えてしまうことが多いので、自立が遅くなることも。

障がい者グループホームでは、自立に悩む方にとっては大きなメリットがあります。

次は障がい者グループホームを利用することで得られるメリットとデメリットについて、それぞれ紹介していきます。

メリット

障がい者グループホームで得られるメリットは以下のとおりです。

  • 自立した生活に向けて支援が受けられる
  • いろんな人と交流ができる
  • 個人に必要な支援が受けられる

1つずつ解説していきます。

自立した生活に向けて支援が受けられる

障がい者の方が自立するためには、掃除や洗濯、調理から金銭管理などすべて自分の判断で行う訓練が必要です。

障がいの種類によっては生活に必要な書類の手続きが難しかったり、日常生活の中で身体的に不自由な生活を1人で行うことが困難になります。

障がい者グループホームでは、障がいを持つ方に共同生活の中において必要なサポートを行い、一人でも生きていける力を身につけることが可能です。

1人1人の障がいに合わせた個別の支援計画をもとに、利用者は必要な支援を受けながら共同生活ができるメリットがあります。

いろんな人と交流ができる

障がい者の方は他者とのコミュニケーションを取る機会が少ないことがあります。中にはコミュニケーションに対して苦手意識がある方も。

また、将来一人暮らしを始めた時に周りとの距離感がつかめずに不安に感じてしまうこともあるかもしれません。

障がい者グループホームでは、毎日いろんな人とコミュニケーションを取る機会を設けているので、交流を深めることが可能です。

日常的にサポートを行う職員は、積極的にコミュニケーションを図ったり、時には良き相談相手にもなります。

自分らしい生活ができる

障がい者グループホームでは、自立した自分らしい生活を目標に個人のニーズに合わせた支援を受けられます。

また、自分の力で出来るようになったことの数が増えると、みんなで互いに褒めあったり、発表することも。利用者にとっては自己肯定感を高める機会になり、他の利用者の刺激にもなります。

入居後も、職員が個別の支援計画の見直しや検討を行うので、利用者にとって支援が行き届く環境にて生活が可能です。

デメリット

障がい者グループホームの以下のデメリットも紹介します。

  • 保険制度が適用外
  • 定員に制限がある
  • 施設ごとに入居条件が異なる
  • 共同生活がストレスになる可能性 

こちらも順番に紹介していきます。

保険制度が適用外

障がい者グループホームの利用において、介護保険や医療保険は適用外になります。

障がい者グループホームで生活するために必要な費用は、家賃や食費、光熱費などですが、保険制度の給付や免除は受けられません。

ただし、障がい者グループホームに入居してからケアが必要な場合は、医療保険や介護保険を活用することは可能です。ただし、障がい者グループホームの利用料を保険制度でまかなうことは出来ません。

しかし、現在は障害者総合支援法に基づき、家賃の補助金が出ます。

自治体で申請を行うと、入居する障がい者グループホームに直接支払われるので、利用者本人のもとには補助金は渡りません。

定員に制限がある

障がい者グループホームの数はまだまだ少数で、さらに定員数が2人以上10人以下と厚生労働省で定められているので、すぐに定員が満たされる場合があります。<出典:厚生労働省>

障がい者グループホームは必ずしも居住地域のグループホームでなければならないという決まりはないので、他の地域で探すことも可能です。

また、障がい者グループホームの利用を考えているなら、早めに定員の状況をケアマネージャーや直接施設に聞いてみましょう。

施設ごとに入居条件が異なる

障がいを持つ方の自立支援を行う障がい者グループホームに入居するには、規定の条件を満たすことが必須です。1人では生活ができないといった障害の程度によりますが、基準については厳密に定められていません。

また、日常生活に必要な支援だけでなく、医療的なケアも実施する障がい者グループホームも少しずつ増えています。

まずは、障がい者グループホームに入居したい旨を支援相談専門員や自治体に伝えてから探してみましょう。

共同生活がストレスになる可能性

障がい者グループホームでは少人数の共同生活を送ることで、将来の自立に向けた支援を受けられますが、中にはストレスに感じる人も。

そのため、誰かと一緒に交流することに抵抗がない方でなければ、障がい者グループホームを通して行う活動が苦に感じられるかもしれません。

実際に入居してみなければ判断は出来かねますが、本人の性格と障がい者グループホームの活動内容を照らし合わせて考える必要もあります。

自立を目指すなら障がい者グループホームを活用しよう!

障がい者グループホームでは、利用者が将来1人暮らしを行うために、自立できるように必要な支援が受けられます。

また、入居した後の共同生活の中で自分に出来ることを増やすことで、利用者の自己肯定感も高められる場所です。

医療的なケアを必要とする方たちが安心して生活を送る場所としての選択肢となり、多様性のある障害福祉サービスとして期待されています。

もし、入居を検討されるなら、メリットとデメリットを把握したうえで利用者の性格や想いを把握してから決めることが大切です。