障がい者グループホームの世話人の仕事に興味はあるけど、中にはこんなお悩みも。

「世話人の仕事内容は?」

「世話人として働くには資格が必要?」

「実務経験がなかったら働けない?」

今回は、障がい者グループホームにおける世話人の仕事内容から、必要な資格や実務経験について紹介していきます。

障がい者グループホームの世話人とは?

障がい者グループホームとは、自立した生活を希望する障がい者を支援する障害福祉サービスの1つです。

障がい者とは、以下の障害者総合支援法に該当する方のことをいいます。<出典:厚生労働省>

  • 知的障害
  • 身体障害
  • 精神障害
  • 難病患者

上記の障害をもつ方と施設スタッフと共に、共同生活を送りながら自立支援を行います。

世話人の役割は、主に入居者の日常生活で必要なサポートが中心です。

また、障がい者グループホームには、世話人の他にもサービス管理責任者や生活支援者と呼ばれるスタッフがいます。

中には、世話人との区別があいまいという方もいるかもしれません。

それぞれ役割が異なるので、順番に仕事内容や世話人との違いについて本記事にて解説していきます。

世話人の配置基準について

障害者グループホームで働くスタッフは、管理者・サービス管理責任者・世話人・生活支援員に分けられます。

それぞれの配置基準について、以下の表を参考にしてみてください。

従業員 世話人 常勤換算で、利用者数を6で除した数以上
生活支援 常勤換算で、次の①から④までに掲げる数の合計数以上
① 障害支援区分3に該当する利用者の数を9で除した数
② 障害支援区分4に該当する利用者の数を6で除した数
③ 障害支援区分5に該当する利用者の数を4で除した数
④ 障害支援区分6に該当する利用者の数を2.5で除した数
サービス管理責任者 ・利用者数が30人以下:1人以上
・利用者数が30人以上:1人に、利用者数が30人を超えて30又はその端数を増す毎に1人を加えて得た数以上
管理者 常勤で、かつ、原則として管理業務に従事するもの(管理業務に支障がない場合は他の職務の兼務可)

<出典:厚生労働省>

障がい者グループホームにおいては、入居者6人まで世話人を1人配置しなければなりません。

世話人の仕事内容

障害者グループホームにおいて、世話人は利用者が将来的に自立した生活を送れるように日常生活に必要な支援を行います。

世話人の仕事内容は、以下の通りです。

  • 掃除・洗濯・食事など家事支援
  • 金銭管理
  • 健康管理
  • 服薬管理
  • 生活上の相談

具体的には、日常生活を送るうえで必要な入浴や排せつ、食事介助や利用者の相談相手としての役割を担います。

また、金銭管理の指導や支援日誌をつけることも。

利用者1人1人と向き合いながら、全面的にサポートを行うので、良き理解者として思いやりをもって寄り添うことも必要です。

世話人は介護のように身体的な負担が必要とされる業務がほとんどなく仕事ができます。

世話人に必要な資格や実務経験は?

世話人に必要な資格や実務経験は特に必要ありません。普段から家事をする方なら、未経験からでも世話人として働くことが可能です。

ただし、家事スキルを活かせる仕事といっても、障害のある方と接する仕事なので、障害への理解と基本的な知識を要します。障害をもつ方の中には、自分の意思を伝えることが難しいことも。

利用者の思いを理解しようとする思いやりがあれば、誰でも挑戦できる仕事なので、資格や実務経験で悩む必要はありません。

障がい者グループホームによっては、資格や実務経験を要することも。

もし、介護関連の資格があれば、優遇される可能性もあるので、働いてみたい障がい者グループホームに問い合わせてみましょう。

世話人として障がい者グループホームで働くときの注意点は?

世話人として障がい者グループホームで働く場合は、サービス管理責任者とは違い資格は必要ありません。

しかし、障がい者グループホームでの生活は、世話人と利用者との関係が、密室的・閉鎖的に陥りやすい傾向も少なくないようです。

利用者への支援に対する思いが強いほど、お互いに求めることに勘違いが生じると信頼関係に影響を与えかねません。

たとえば、人権侵害に接触するような食事や生活の制限や、暴言・暴力などが行われる可能性が高い傾向も。

世話人は、人間性が問われる仕事といっても過言ではありません。利用者に対して「人権の尊重」を意識しながら、障害者の方を支援する者として認識することが必要です。

世話人として働ける場所

障害をもつ方の支援を行う世話人として働ける場所は、どんなところがあるのか気になりますよね。

障がい者グループホームには4種類の施設があります。

  • 介護サービス包括型
  • 外部サービス利用型
  • サテライト型住居
  • 日中活動サービス支援型

それぞれ順番に解説していきます。

介護サービス包括型

将来的に自立した日常生活を送るために、必要な食事・入浴・排せつなどの介護を要する障害者の方を対象としたグループホームです。主に夜間において、障害者の方の世話を行います。

また、生活介護、自立訓練、就労移行支援などの日中活動サービスを行いながら、連絡調整や余暇活動の支援も。

2020年4月の厚生労働省の統計によると、介護サービス包括型の利用者は知的障害のある方が多く、障害支援区分では区分2〜4の方が利用する傾向にあります。<出典:厚生労働省>

外部サービス利用型

外部サービス利用型は、日常生活における支援は主に施設のスタッフが行い、介護サービスについては外部委託の居宅介護事業所から提供されるグループホームです。

主に夜間に必要な日常生活上の支援や相談はグループホームの世話人が行います。

また、食事・入浴・排せつなどの介護については、委託先から派遣された介護スタッフに任せているのも特徴の1つです。

外部サービス利用型の利用者は精神障害のある方が過半数で、障害支援区分では「区分なし」の方が多く利用されています。<出典:厚生労働省>

サテライト型住居

サテライト型住居は、他の利用者と交流できる共同生活住居を利用しながら、近くのアパートやマンションの一室で、一人暮らしに近い形態で生活を送るタイプのグループホームです。

本体住居となる共同生活住居の居間や食堂の設備を利用して、食事や余暇活動などを行います。

サテライト型住居では施設スタッフの定期的な見回りが行われるので、安心して家事や日常生活に必要な支援や、食事・トイレなどの介護を受けられます。

共同生活が苦手な方や、一人暮らしを希望する方に最適です。サテライト型住居の利用期限は2年間と定められています。

日中活動サービス支援型

日中活動サービス支援型は重度障害のある方、または高齢による他の日中活動サービスを受けられない障害者の方を対象としたグループホームです。

また、昼から夜まで日常生活に必要な家事や相談などの支援や、食事・入浴・排せつの介護サービスが提供されます。

他のグループホームとは違って日中も利用できることから、世話人や生活支援員の配置人数が多いことも特徴です。

日中活動サービス支援型の利用者も、知的障害のある方が多く、障害支援区分が4~6と高めの方が利用されています。<出典:厚生労働省>

世話人に向いている人

世話人に向いている人は、以下のような特徴があります。

  • 普段から家事が好きな方
  • 人の気持ちを汲み取るのが得意な方
  • 人と接するのが好きな方
  • 障害に理解のある方

上記の特徴は、世話人として働くなら最低限必要な要素です。障害に知見のある方で、普段から家事全般を行う方が望ましいといえます。

また、自分の意思を伝えることが難しい利用者の思いを汲み取ったり、求めていることに気付くことができる観察力や洞察力もあれば尚いいでしょう。

思いやりをもって人と接することができるので、人が好きな方にとっては、やりがいが感じられる仕事です。世話人として働く前に、障害に関する知識は頭に入れておきましょう。

人の命を扱う仕事であることは間違いないので、障害のある方への迅速な対応は欠かせません。

世話人の仕事で大変なことは?

世話人が未経験の方にとっては初めてのことばかりで、とまどうこともあるかもしれません。やりがいのある仕事とはいえども、人と接する仕事なので思い通りにはいかないもの。

世話人の仕事で大変だと思うことを具体的に挙げてみました。

  • 精神障害をもつ方が世話人の何気ない一言で悩ませてしまうことも。
  • 世話人がどこまで利用者に介入していいか最初はわからない。
  • 勤務時間とプライベートな時間との区別がつきにくいところも。

障害の種類によっては、世話人の態度や言動で悩ませてしまうことも。特に精神障害をもつ方の中には、繊細な人もいるので普段の行動に気をつけなければなりません。

障がい者グループホームでは日常生活が仕事になるので、仕事とプライベートの区別がつきにくい点も

利用者と長く接する時間が多いほど、どこまで介入していいのか最初はとまどうかもしれません。

仕事の中で大変だと思ったことは、熟知している上司や同僚の方に相談してみるといいでしょう。

世話人とサービス管理責任者の違いとは?

サービス管理責任者は障害者総合支援法に基づき、障害福祉施設に配置が義務付けられています。

サービス管理責任者の役割は以下の通りです。

  1. 個々のサービス利用者のアセスメントや個別支援計画の作成、定期的な評価などの一連のサービス提供プロセス全般に関する責任
  2. 他のサービス提供職員に対する指導的役割

<出典:厚生労働省>

他にも、施設の関係者や関係機関との連携を取り計らう役割も担います。

基本的にサービス管理責任者は、利用者に直接支援する世話人や生活支援員などの直接処遇職員や管理者とは別の役割があるので、兼務する義務はありません。

ただし、サービス管理責任者としての本来の業務の妨げにならないのであれば、直接処遇職員や管理者との兼務も可能です。

つまり、サービス管理責任者は世話人の指導者になります

世話人と生活支援員の違いとは?

障がい者グループホームには世話人と生活支援員と呼ばれる役割の職種がありますが、区別があいまいという方もいるでしょう。

一言でいえば、介護や介助を行うか、行わないかの違いがあります。どちらも利用者に対して日常的な支援を行うので、それぞれ仕事の範囲を理解しておくといいでしょう。

世話人と異なる生活支援員の仕事内容から、障がい者グループホームにおける役割と世話人との兼務について解説していきます。

生活支援員の仕事内容

生活支援員は、主に食事・入浴・排せつなどの介護による日常生活の支援を行います。

さらに、就労を希望する障害を持つ方をサポートするための就労移行支援や、就労継続支援A・B型事業所では、健康管理の指導も含まれます。

生活支援員は、介護サービス包括型とサテライト型住居の2つのグループホームで介護サービスを提供しており、外部サービス利用型においては介護が外部委託のため、人員配置の義務がありません。

生活支援員も、世話人と同様に資格や実務経験がなくても働くことが可能です。介護福祉士など介護関連の資格を保有していれば、就職に有利な場合も。

また、生活支援員は農耕や園芸、工芸や木工、織物などの職業訓練の指導を担うこともあります。

人間関係の悩みや将来への不安をもつ利用者も少なくはないので、相談相手として親身になって話を聞くことも。

あらゆることすべてを支援するわけではなく、利用者が自立できるように見守ることも生活支援員の仕事です。

生活支援員として働ける場所は?

生活支援員として働ける場所は、以下のように世話人と比べると幅広くなります。

  • 高齢者施設・老人ホーム
  • 障害者支援施設
  • 就労移行支援事業所
  • 就労継続支援A型事業所
  • 就労継続支援B型事業所

働く場所が違えば仕事内容も異なるので、それぞれ確認しておきましょう。

高齢者施設・老人ホーム

高齢者施設・老人ホームでは、利用者の食事・入浴などの介助をはじめ、農耕・園芸や陶芸といった職業訓練の指導を行います。施設によっては介護が中心になることも。

利用者に安心して施設を利用してもらうために、家族との連絡や、施設内での計画・調整・打ち合わせ、福祉施設や医療機関との連携業務も必要です。

障害者支援施設

障害者支援施設では、利用者の日常生活で必要な支援を行い、将来的に自立できるようにします。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所では、利用者の一般企業への就労を目標に、生活習慣や技能習得の支援を行います。利用者の不安をなるべく緩和させるために、相談相手になることも仕事の1つです。

就労継続支援A型事業所

就労継続支援A型事業所では、就労することが困難な障害者に対して、必要な職業訓練を行います。企業との雇用契約に基づく生産活動の機会を利用者に提供し、一般企業への就労までを支援する事業所です。

就労継続支援B型事業所

就労継続支援B型事業所では、就労に支障をきたす障害があり、雇用契約が難しい方に対して、生産活動の機会の提供による就労支援を行います。

世話人と兼務は可能?

障がい者グループホームで働くスタッフは、障害総合支援法に基づく人員配置基準を満たしていれば、職務を2つまで兼務することも可能です。

生活支援員になるために資格や実務経験は必要ないので、世話人と生活支援員の掛け持ちができます

ただし、兼務する場合は、世話人と生活支援員として労働する時間帯を明確に分けなければいけません。

世話人は資格がなくても未経験から働くことができる!

障害をもつ方の日常生活を支援する世話人になるためには、資格や実務経験がなくても働くことはできます。

世話人として働くにあたって、家事能力や障害の知識と理解、洞察力などを兼ね備えていることが前提です。

障害をもっていても同じ人間なので、世話人としての関わり方は常に見られていることを意識しておきましょう。

最初はとまどうこともあるかもしれませんが、利用者を理解しようと努めるうちに慣れてきます。

だからこそ、利用者が求めていることを察知できる洞察力や観察力がある方は世話人に向いているので、この機会に挑戦してみてください。