障がい者グループホームを利用する際に、低所得世帯で費用が支払えないといった方も少なくはありません。

「これから障がい者グループホームに入居を考えているが、利用者負担についてよくわからない」という方は必見です。

今回は、障がい者グループホームの利用者負担について詳しく解説していきます。

障がい者グループホームの利用者負担

障がい者グループホームの利用者負担には、毎月上限があります。利用者が属する世帯の収入状況によって、負担額が異なるので、まずは世帯年収の確認が必要です。

所得を判断するときの世帯の範囲は、18歳以上の障がい者の方の場合、本人と配偶者になります。20歳未満の障害児の場合は、保護者が属する住民基本台帳の世帯が対象です。

以下の表に、世帯別で利用者負担の上限額を記載したので、参考にしてみてください。

区分 世帯の収入状況 負担上限額
生活保護世帯 生活保護受給世帯 0円
低所得世帯 市町村民税非課税世帯 0円
一般1 市町村民税課税世帯 9,300円
一般2 上記以外 37,200円

<出典:厚生労働省 >

ひと月に受けた福祉障害サービスの量に関係なく、負担上限額が設定されています。

また、低所得世帯の注意点として、3人世帯かつ障がい者基礎年金1級受給者の場合は、年収300万円以下が対象になります。

一般1の収入状況で、市町村民税非課税世帯とありますが、所得割と呼ばれる、本人の所得金額に応じて居住地域に納める税金額が16万円未満の世帯が対象です。つまり、年収600万円以下の世帯になります。


一般2に該当する方は、世帯の中に20歳以上で、グループホームを含む施設利用者がいる場合に、市町村民税課税世帯が対象です。

療養介護を必要とする場合は減免も

医療的なケアが必要な療養介護を利用する場合は、医療型個別減免と呼ばれる、従来の障害福祉サービスにかかる費用+医療費と食費の減免制度があります。

低所得世帯に属する方は、最低25,000円が手元に残るように、20歳以上の施設利用者に限り、利用者負担額が減免されます。

20歳未満の障害児の場合は、医療型障害児施設・療養介護の利用者が対象です。

障がい者グループホームで必要な生活費用

障がい者グループホームでは、利用料以外にも、食費や光熱水費が必要です。上限がないので、入所する施設によって料金は異なります。

他にも、日用品や服飾などの雑費も自己負担です。費用を掛けずに生活するなら、なるべく無駄遣いしないように、節約しなければなりません。

実際のところ、年金受給額の範囲で料金設定されている障がい者グループホームも多いので、ほとんどの場合は生活費に困ることはありません。

また、毎月1万円が給付される家賃補助制度を利用すると、本人の負担額が軽減されます。

家賃補助(特定障がい者特別給付費)

特定障がい者特別給付費は、低所得や生活保護世帯の障がい者の方が給付対象の家賃補助制度です。障がい者グループホームの家賃が毎月1万円以上の場合に、家賃補助として1万円が給付されます。

ちなみに障がい者グループホームの家賃相場は約2~4万円です。もし、家賃が1万円未満の場合であっても、家賃相当額が給付されます。

家賃以外の食費や光熱水費などは給付の対象にはなりません。また、家賃補助金は本人の手元ではなく、障がい者グループホームが代理で受け取ります。

家賃補助の申請については、毎年の更新が必要です。入居する施設の家賃が改定されたときにも、家賃補助を受け取るために、再申請しなければなりません。

高額障害福祉サービス等給付費

高額障害福祉サービス等給付費は、障害福祉サービス介護保険サービスを利用する障がい者の方が複数いる世帯が対象の給付制度です。

具体的な対象者は以下の通りです。

  • 1人の障がい者もしくは障害児が、2つの受給者証でサービスを併用
  • 障がい者もしくは障害児の兄弟が、各サービスを受給

世帯の利用負担額を合計した金額が、基準額の37,200円を超えた場合に、差額分の返金が行われます。

介護保険サービスのみ利用する場合の注意点

高額障害福祉サービス等給付費は、高額介護サービス費等の利用負担額の差額を返金されたあとに残る、障害福祉サービスの利用負担額が対象の給付制度です。

高額障害福祉サービス等給付費の申請とともに、高額介護サービスの支給を受ける必要があるので、先に申し込みしておきましょう。高額障害福祉サービス等給付費の申請については、居住地域の自治体で対応しています。

負担減免措置

障がい者グループホームの生活において、自己負担の対象となる食費や光熱水費などの負担減免措置があります。

具体的な負担減免措置は、以下のとおりです。

20歳以上の利用者

食費や光熱水費の自己負担額を、53,500円を上限にそれぞれの施設で設定されます。また、低所得の方に対して、最低25,000円が手元に残るように補足給付が行われるので、負担額が53,500円に。

就労などで得た収入は、24,000円まで認定外です。24,000円を超える場合においても、30%は収入として認定されません

通所施設の利用者

世帯区分が低所得と一般1に該当する方の場合は、食材料費のみの負担になるので、実際の自己負担額は全体の1/3になります。

たとえば、月22日利用すると約5,100円の負担に。食材料費は、施設ごとに設定されます。

障がい者グループホームと生活保護制度

障がい者グループホームを利用する生活保護世帯の障がい者の方も少なくはありません。生活保護制度と障害福祉サービスとの関係性について知っておくと、本人に収入がない状況であっても、安心してサービスを利用できます。

施設に入居中の方でも、生活保護制度の利用は可能です。ただし、厚生労働省が定めている条件に当てはまらなければ適用されません。

次は、生活保護制度の概要から障害年金受給者との関連について解説していきます。

生活保護制度とは?

生活保護制度の趣旨は以下のとおりです。

生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とする

<出典:厚生労働省> 

生活保護制度は、本人の資産や能力を活用しても生活に困窮する方を対象としています。障害をもつ方も同様です。

生活保護の申請は、基本的に居住地域の福祉事務所もしくは役場で行います。

生活保護の要件

生活保護を受給するためには、以下の要件を活用することが前提とされています。

  • 資産の活用(預貯金や資産があれば売却で生活費に充てる)
  • 能力の活用(労働が可能であれば、能力に応じて働く)
  • あらゆるものの活用(年金や給付制度を活用する)

仮に生活保護を受給期間中に、資産に該当する自動車を所有していると、売却するように指示されることも。もしくは、申告漏れで不正受給者として、生活保護を受け取れなくなる可能性があります。

障害をもつ方で、自動車の維持費を援助できる身内がいれば、所有の条件に課される場合があるので、近くの福祉事務所か役場で確認しておきましょう。

扶助の種類

生活保護制度の扶助は、大きく分けると8種類あります。

それぞれ以下の表で確認してみてください。

扶助の種類 生活で必要な費用 支給内容
生活扶助 食費・被服費・光熱費など生活で必要最低限の費用。 ①個人的費用
②光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出。特定の世帯には加算あり(母子加算等)
住宅扶助 住居の家賃 定められた範囲で実費を支給
教育扶助 義務教育に必要な学用品費 定められた基準額を支給
医療扶助 医療サービスの費用 直接医療機関へ支払い
(本人の負担なし)
介護扶助 介護サービスの費用 直接介護事業者へ支払い
(本人の負担なし)
出産扶助 出産費用 定められた範囲で実費を支給
生業扶助 就労に必要な技能の修得等にかかる費用 定められた範囲で実費を支給
葬祭扶助 葬祭費用 定められた範囲で実費を支給

<出典:厚生労働省>

障がい者グループホームで生活保護制度が利用可能

障がい者グループホームの利用者の方でも、生活保護制度が利用できます。本人が巨樹する自治体に限らず、他の自治体の障がい者グループホームに入居は可能です。

また、生活保護については、住民票がある自治体のまま継続されます。一般的には、入居する障がい者グループホームの所在地に住民票を移しますが、まだ住民票を移していない場合は、世帯分離が必要です。

世帯分離とは、本人の住民票に登録されている世帯を2つ以上に分離することを指します。

もし、医療機関で保険適用の診療を受ける場合は、生活保護制度の医療扶助により、無料になるので、本人が自己負担することはありません。

ただし、自治体から指定されていない病院や、医療扶助として支給される医療券・調剤券の提出を忘れると、医療費が自己負担になるので注意しましょう。

障がい者グループホームの家賃については、生活保護制度の家賃扶助で定められた範囲であれば、全額支給されます。

生活保護受給者もしくは低所得世帯の方であれば、家賃補助として月に1万円の給付が行われるので、活用しましょう。

生活保護受給者が障がい者グループホームを利用するときに必要なもの

生活保護受給者が障がい者グループホームに入居するときや、就労移行支援、就労継続支援などの支援サービスを受ける場合に、以下のものが必要になります。

  • 障がい者手帳
  • 障害福祉サービス受給者証

上記のものを持ってない方は、先に居住地域の役場で申請しましょう。

即時発行されるわけではなく、1か月かかる可能性もあります。障がい者グループホームへの入居を検討する時期から申請することがおすすめです。

また、入居する障がい者グループホームが遠方にある場合は、医療機関を利用する際に医療券・調剤券を取りに行く手間がかかります。

なるべく、近くの障がい者グループホームを選ぶようにしましょう。

障害年金受給者でも生活保護の申請が可能

障がい者グループホームの利用者の方のなかには、障害年金以外に収入がないことが多く、施設の利用料や自己負担しなければならない費用の支払いが困難なことも。

収入の工面に事情を抱えた障害年金受給者でも、生活保護の申請が可能です。生活保護受給者に認定されると、生活費や医療費、家賃補助などが支給されるメリットがあります。

本来の自立支援の観点において、障がい者の方たちの将来的な自立を目的としているので、障がい者の方が生活保護に頼らずに、基本的には障害年金のみで自立した生活が勧められています。

障害年金について

障害年金には、以下の2種類があります。

  • 障害基礎年金
  • 障害厚生年金

障害基礎年金は、障害や病気の初診日の時点で、国民年金に加入していた方が受給できる障害年金です。また、20歳未満もしくは60歳以上65歳未満の間に、障害として診断されている状態の方も受給対象者となります。

障害の度合いでは、1級もしくは2級に該当する方ですが、障がい者手帳とは関係ない等級です。

一方、障害厚生年金は、障害基礎年金と同様に初診日の時点で、厚生年金に加入していた方が受給できる障害年金です。障害基礎年金に上乗せする形で支給されます。

障害の度合いでは、1~3級に該当する方ですが、障害厚生年金を受けるよりも軽い障がい者の方の場合には、一時金である障害手当金も支給されます。

それぞれの障害年金の特徴について、理解しておきましょう。

生活保護への移行防止策について

障がい者の方の生活保護への移行防止策として、障がい者グループホームで負担しなければならない費用の引き下げを行います。

仮に、家賃補助制度や負担減免措置を行ったとしても、生活保護の対象となる場合には、負担上限額や食費などの引き下げが可能です。

自己負担額を軽減しても不足する場合には、生活保護が支給されるようになります。

すぐに生活保護を受給できないことを覚えておきましょう。

国の補助制度を理解しておこう!

今回は、障がい者グループホームの利用者負担や生活保護について紹介しました。現状は、障がい者の方の過半数が、低所得もしくは生活保護世帯です。

低所得で生活が困難な障がい者の方にとって、負担軽減となる補助制度が充実しているので、安心して障害福祉サービスが受けられます。

また、障がい者グループホームに入所する場合には、利用料や食費などの自己負担額が必要です。厚生労働省が定めた負担軽減措置や家賃補助を活用することで、本人の手元に現金が残るように仕組化されています。

これから障がい者グループホームへ入所を検討している方や入所中の方も、国の補助制度を知り、将来的な自立に向けて一歩ずつ近づけていきましょう。