障がい者グループホームではスタッフの離職率が多いことで、既存スタッフへの業務負担が問題視されています。
さらに、様々な原因で人手不足が慢性化しているため、スタッフの労働時間が長くなりがちです。
こういった問題が続くと、障がい者グループホームの運営がさらに厳しくなるでしょう。
本記事では、障がい者グループホームの離職率が多い理由とその原因・解決策について解説。また、障がい者グループホームで働くことに向いてる人と向いていない人も紹介します。
障がい者グループホームで離職率が多い7つの理由
障がい者グループホームでは入居者の方の世話や支援を行いますが、人手不足の状態だとスタッフ1人あたりの業務が多くなり、労働時間も長くなります。
なかには労働条件に不満を持つスタッフも少なくはありません。障がい者グループホームで離職率が多い理由は以下の7つです。
- 給料が労働と見合っていない
- 人手不足・業務量が多い
- 人間関係が良くない
- やりがいが感じられない
- 将来のキャリアに不安
- ライフスタイルの変化
- 障がい者グループホームの運営方針に不満がある
それぞれ詳しく説明します。
給料が労働と見合っていない
障がい者グループホームを含む福祉業界では、労働に対する給料が少ないという意見があります。なぜなら、運営側から正当に評価されておらず、個人のスキルに見合った給与設定がないことがあるからです。
こういった場合は、人事制度や給与設定から見直しが必要になります。また、資格手当があれば、スタッフの仕事に対するモチベーションが生まれることも。
サービス管理責任者など役職に就けば、昇給が見込めるのでキャリアアップを考えている人は目指してみてもいいでしょう。
人手不足・業務量が多い
障がい者グループホームのみならず福祉業界全体的に人手不足が深刻のなか、業務量は変わらないので、通しで勤務するスタッフもいます。
障がい者グループホームでは入居者の方の世話はもちろん、常にコミュニケーションや観察が欠かせません。さらに、スタッフのシフト作成や勤怠管理から、他の施設との連携に必要な登録情報の管理など事務作業が膨大です。
人手不足のなかで業務を引き継いでもらうスタッフが離職してしまうと、結局、労働時間が増えていくことに。この状況であれば、早急に勤務体制の見直しが必須です。
人間関係が良くない
障がい者グループホームのみならず、他の仕事でも一番の悩みである人間関係。どうしても上下関係が発生する職場では、意見の相違や相性によって人間関係に苦労する人もいます。
人間関係が良くなければ、仕事へのモチベーションが下がってしまい、離職するスタッフもいるので、気を付けなければなりません。
スタッフ同士のコミュニケーションが成立してなければ、入居者の方に対しても迷惑がかかる可能性も。障がい者グループホームで入居者の方が穏やかに過ごしてもらうために、まずは職場環境の改善が必要です。
やりがいが感じられない
障がい者グループホームでは入居者の方に対して、将来的に自立を目指した支援を行う場所です。日常では世話したり、レクリエーションなど行いますが、仕事に対してやりがいを感じられない人もいるでしょう。
障がい者グループホームの仕事にやりがいを感じられなくなったら、今の仕事を見つめ直してみましょう。「この仕事をやっていて良かった」と思える瞬間を思い出すと、モチベーションに繋がるかもしれません。
もし、仕事が楽しくなかったり、やりがいが感じられなければ、無意識にストレスが溜まっている可能性があります。自分にとってやりがいのある仕事を探してみるといいでしょう。
将来のキャリアに不安
障がい者グループホームの役職は施設長もしくはサービス管理責任者が一般的です。一定の実務経験や研修が必須ですが、責任のある立場になることでやりがいを感じる人もいます。
しかし、役職者を見ていると将来のキャリアに不安を感じることも。入居者の方の世話のみならず、運営に必要な事務作業があるため、残業することもあるでしょう。
その様子を見て「自分には向いてない」と思うスタッフは、将来のキャリアに関心を持たずに離職してしまう可能性があります。
障がい者グループホームで働くスタッフのキャリアについて、考え直す機会を与えてみるといいでしょう。
ライフスタイルの変化
障がい者グループホームで働くスタッフのなかには、結婚や出産、引っ越しで離職を考える人が多いでしょう。ライフスタイルが変わると、仕事をしたくてもできない状況にならざるえないので、仕方がありません。
離職することが不安であれば、ライフスタイルが変わる前に事前に伝えておくことが必要です。
そういう状況を想定してスタッフが余分にいると安心です。また、本人の仕事復帰ができるように体制を整えておくといいでしょう。
障がい者グループホームの運営方針に不満がある
利益よりサービスを重視する運営者も多いので、入社する前に面接で質問しておくといいでしょう。
これから障がい者グループホームで働きたい人は、求人情報をしっかり確認しておくことが大切です。たとえば労働条件のなかに、年間休日の記載がなかったり、給与条件が異常に高いと気をつけなければなりません。
入社してから条件が異なる場合が多いので、面接の時点で不明点はしっかり確認しておきましょう。また、長く勤めていると障がい者グループホームの運営方針に不満を抱く人も少なくはありません。
経営者が利益ばかり追求するとサービスがおざなりになったりすると、スタッフの離職率が多くなるので注意しましょう。
離職率が多い障がい者グループホームを見分ける6つのポイント
離職率が多い障がい者グループホームを見分ける6つのポイントは、以下のとおりです。
- 頻繁に求人募集がある
- 他の障がい者グループホームより異常に給与が高い
- 簡単すぎる面接で内定・採用が早い
- 施設内の清掃が行き届いていない
- スタッフの態度が良くない
- 労働条件が不透明
それぞれ順番に解説します。
頻繁に求人募集がある
一定期間を置いても頻繁に求人募集がある職場は、スタッフの離職率が多い可能性があります。スタッフの離職理由に対して改善されておらず、定着しないことから毎回募集を出さなければならない状況に。
障がい者グループホームの事業拡大で、人員増加のための募集である可能性もあるので一概にはいえません。
しかし、調べてもわからないのであれば、職場環境に問題があるのでしょう。
他の障がい者グループホームより異常に給与が高い
他の同業他社よりも給与が異常に高い場合は、スタッフが定着しない職場環境である可能性があります。
離職率が多い職場であるため、給与を高くすることで人手不足を解消するために人数を集めようと必死なのでしょう。
面接時に労働に対する給与設定の詳細について、質問しておきましょう。
簡単すぎる面接で内定・採用が早い
浅い質問が多く、簡単すぎる面接で内定から採用まで早い会社は、人手不足が慢性化している可能性があります。
とにかく人が欲しいので、現場に補充が出来ればいいような職場環境です。採用するスタッフの人間性を慎重に見定める余裕さえない状況なのでしょう。
こういった職場では既存のスタッフの質も低いため、人間関係のトラブルが起こりやすくなります。
施設内の清掃が行き届いていない
障がい者グループホームでは入居者の方が安心して生活ができるように、行き届いた清掃が必要ですが、あまりにも不衛生の場合は人手不足もしくは意識が低いと判断できます。
不衛生で散らかっている環境では、仕事が上手く回らずにストレスの源に。また、入居者の方が誤って事故を起こす可能性もあるため、余計にストレスが増えてしまいます。
こういった環境では、スタッフの離職に繋がり、人手不足から抜け出せない状況が続くでしょう。
スタッフの態度が良くない
働きたい障がい者グループホームに面接で訪れた時に、スタッフの対応や態度を観察しておきましょう。もし、良くなければ職場環境でストレスを抱えている可能性があります。
また、入居者の方に対して雑なコミュニケーションを取っている場合も注意しましょう。赤ちゃん言葉やため口で話しているスタッフがいたら、職場の雰囲気が良くないと判断できます。
障がい者グループホームでは入居者の方はもちろん、スタッフ同士のコミュニケーションとチームワークが重要なので、スタッフ同士の雰囲気は必ず確認しておきましょう。
労働条件が不透明
よくある危険な求人広告に、労働条件の詳細が記載されていないことがあります。本来は労働基準法により、雇用するスタッフに年間休日や残業、給料に関する労働条件を書面で提示しなければなりません。
入社してから労働条件が異なる場合は、いわゆるブラック企業ともいえます。調べても不透明であれば、直接聞いてみましょう。
また、面接時に労働条件の詳細について触れないようにする会社も注意が必要です。
障がい者グループホームの離職率を下げる解決策5つ
障がい者グループホームにおいて離職率が多いまま、放置した状態では危険なので、すぐにでも改善しなければなりません。入居者の方に満足なサービスが提供できなければ、いずれ運営崩壊の恐れがあります。
障がい者グループホームの離職率を下げる解決策は、以下の5つです。
- 人事制度を見直す
- 資格取得の機会を設ける
- 業務の効率化
- 新人を複数人採用する
- 外国人労働者を受け入れる
それぞれ1つずつ説明します。
人事制度を見直す
障がい者グループホームで離職率が多い原因は、人間関係や人手不足によるストレスなので、人事制度を改革する勢いで見直す必要があります。
スタッフ1人1人の業務が不透明である状態が危険なので、明確にしておくと、無駄な業務を削減できる可能性も。
また、労働時間も長くなりがちであれば、業務量を見直すことで少しずつ残業が減らしていく工夫が必要です。
さらに、個人のスキルを正当に評価することで仕事のモチベーションに繋がり、スタッフの離職を予防できるでしょう。
資格取得の機会を設ける
障がい者グループホームで働くために特別な資格はいらないところもありますが、介護福祉士など福祉系の資格があれば、有利になることも。
たとえば、福祉系の会社に転職する際に優遇してもらえる可能性が高く、資格手当があれば昇給に繋がります。
他にも、サービス管理責任者の研修制度の支援があれば、スタッフのキャリアアップを目指す機会に。
普段は業務で多忙であるため、勉強する時間が取れない人も多いかもしれないので、スタッフにとってはメリットになります。
業務の効率化
障がい者グループホームでは、入居者の方の世話以外にも、支援計画書の作成や日常的な事務作業が発生します。
現状、紙媒体で保管されている施設もあるので、膨大な数のファイルの中から欲しい情報を見つけることにも苦労するでしょう。
最近では、ICT(情報通信技術)を利用したシステムが福祉業界にも導入されており、ペーパーレス化にすることで、無駄な手作業の削減が可能です。
こういった業務の効率化で、本来やるべき業務に集中できるため、人手不足の解消に繋がります。
新人を複数人採用する
スタッフの離職率が多い職場では、人間関係が原因であることがほとんどです。長年勤めているスタッフと入社して期間が短いスタッフとの意見の相違で、雰囲気が良くないパターンがあります。
解決策の1つとして、新卒の新人を複数人同時に採用することで、新しい空気を入れる方法です。
採用する時に5人以上いれば、若者たちの考え方が職場に浸透するため、既存スタッフにも良い影響を与えることになります。
外国人労働者を受け入れる
近年、外国人労働者の受け入れが日本でも行われています。国内で人手不足が慢性化している業界に外国人労働者を導入することで、スタッフの離職を防ぐ効果も。
日本以外の価値観が職場にも良い影響を与える可能性があるので、即戦力として期待できるでしょう。
彼らは原則5年間就労が可能ですが、5年が経つと退職することになるので、注意が必要です。
障がい者グループホームに向いてる人・向いていない人
障がい者グループホームで働く場合に、向いてる人と向いていない人はもちろんいます。
しかし、向いてる人に当てはまっていたとしても、何かしらの要因で離職する可能性も。
適材適所という言葉があるとおり、相性や仕事のやりがいもあるので、実際の業務内容と照らし合わせながら紹介します。
向いてる人
障がい者グループホームの入居者の方は、障害を持っているため、出来ないことが多く不安に感じることも。
それに対して、スタッフは入居者の方の気持ちをくみ取る姿勢が求められます。スタッフがすべて世話をするのではなく、入居者の方ができることを尊重しながら支援が必要です。
つまり、相手の気持ちに寄り添いながら観察ができる人が向いているでしょう。
障がい者グループホームで働く場合に、以下の要素が必要です。
- 体力に自信がある人
- 土日祝でも出勤が可能な人
- コミュニケーションが得意な人
- 観察力が高い人
それぞれ詳しく説明します。
体力に自信がある人
体力に自信がある人は障がい者グループホームでも有利です。24時間体制で夜勤があるため、生活リズムが乱れるほかに、1人で対応することもあります。
体力に自信があれば、障がい者グループホームで働くことが可能です。
土日祝でも出勤が可能な人
障がい者グループホームでは、入居者の方を365日24時間体制で見守るので、必然的に土日祝の勤務が発生します。平日が休みでも気にしない人は、問題なく働くことが可能です。
障がい者グループホームによっては、固定の曜日で休日が取れる場合もあるため、確認しておきましょう。
コミュニケーションが得意な人
障がい者グループホームでは、入居者の方とスタッフ同士とのコミュニケーションが必要不可欠です。
入居者の方のなかには、スタッフと話す時間を楽しみにしている人もいます。障害を持っていたとしても、気配りや丁寧な言葉遣いは伝わるので、意識してみましょう。
観察力が高い人
障がい者グループホームでは、常に入居者の方の様子を観察しながら、必要な支援を行います。求めていることを読み取る観察力があれば、コミュニケーションがスムーズです。
特に女性は本能で赤ちゃんが求めていることを読み取る能力に長けているので、有利かもしれません。
向いていない人
障がい者グループホームで働くにあたって、向いてない人についても紹介します。
- 潔癖症の傾向がある人
- 丁寧な仕事が苦手な人
- 自分のペースで仕事がしたい人
上記に当てはまる人は、障がい者グループホームのスタッフに向いていない傾向があります。
それぞれ順番に解説します。
潔癖症の傾向がある人
障がい者グループホームでは、入居者の方に食事・入浴・排せつなどの支援を行うため、潔癖症の傾向がある人にとっては苦痛になるかもしれません。
逆に潔癖症の傾向があったとしても、施設内の清掃で発揮する可能性もあるので、必ずしも向いていないとはいえません。
丁寧な仕事が苦手な人
細かい仕事を雑に行ってしまう人は、障がい者グループホームで働くことに向いていないかもしれません。基本的に入居者の方の世話をするため、丁寧さが求められます。
雑な対応は入居者の方にとっては不快に感じることもあり、事故やクレームに繋がるため、注意しなければなりません。
プライベートでは雑であっても、仕事では丁寧な対応が出きていれば、問題はないでしょう。
自分のペースで仕事がしたい人
障がい者グループホームではスタッフとの連携が必要であるため、1人で仕事がしたい人にとっては苦痛に感じることも。
人ありきの仕事なので、自分のペースで仕事は難しいでしょう。1人で思い描いた計画であっても、物事は思い通りに進まないので、自分本位では他のスタッフに迷惑をかけるかもしれません。
障がい者グループホームではスタッフよりも入居者の方が優先なので、相手のペースに合わせて業務を進める必要があります。
まとめ
障がい者グループホームの離職率が多い理由と原因、解決策について解説しましたが、すべての施設に当てはまる訳ではありません。
しかし、他の業界でも人間関係と人手不足の問題はあるため、障がい者グループホームに限りません。
また、障がい者グループホームに向いていない人も離職率を高める原因の1つとして考えられます。
スタッフ同士の意見の相違や、職場に苦痛に感じることがあるとスタッフが定着しないので、雰囲気を変えるために新人や外国人労働者を雇う方法も検討してみましょう。