障害福祉サービスの1つである短期入所・ショートステイは、一時的に障がい者の方が入所できる施設として利用されています。

これから短期入所の利用を検討している方のなかには、「短期入所の利用要件はある?」「短期入所と他のサービスは併用できる?」といった疑問を持つことも。

そこで本記事では、障がい者グループホームにおける短期入所・ショートステイの利用について解説します。

また、短期入所の運営基準や要件を知ることで、安心して利用できるでしょう。

障がい者グループホームにおける短期入所・ショートステイとは?

短期入所・ショートステイは障害福祉サービスの1つで、多くの障がい者グループホームが運営しています。

障がい者グループホームにおける短期入所・ショートステイは、自宅で生活する障がい者の方が短期間限定で施設入所が可能なサービスです。

用途はさまざまですが、緊急一時保護や家族のレスパイトを目的としたもの以外に、自立的な生活に向けての事前準備として、すでに単身で生活している人の心身の健康状態を維持管理する目的としても利用されています。

また、世話をする家族の一時的な休息で利用することも可能です。ほかにも、近隣住民からの苦情に対する疲弊感への対応の役割を持ち、日常生活における行き詰まりへの支援といった社会的意義があります。

短期入所・ショートステイでは、障がい者グループホームと同様に食事・入浴・排せつなどの支援を受けることが可能です。

障がい者総合支援法において、短期入所・ショートステイは介護給付の区分になります。

1日のスケジュール

施設によって1日のスケジュールは異なりますが、基本的なスケジュールの例は以下のとおりです。

6:00

起床

8:00

朝食

10:00

日中活動

12:00

昼食

14:00

入浴

15:00

おやつ

17:30

夕食

20:30

就寝準備

22:00

消灯

障がい者グループホームと過ごし方とほとんど同じなので、1泊2日から利用できる「お試し入居」のようなイメージです。

短期入所・ショートステイの事業形態

短期入所・ショートステイは以下の事業形態に分けられます。

併設事業所

施設入所支援、グループホーム・ケアホーム等の夜間サービスと一体的な運営形態。

空床利用型事業所

施設入所、グループホーム・ケアホーム等の夜間サービスで、入居者が利用していない居室を利用する運営形態。

単独型事業所

①生活介護、就労継続支援B型等の通所サービス事業所に併設して行う形態。
②一軒家を利用した形態

厚生労働省が実施した平成24年度の調査結果によると、日本国内の短期入所・ショートステイは併設型事業所が過半数を占めています。

また、利用者の障害別では、知的障害を持つ方が全体の5割、精神障害を持つ方が2割しかいない結果となりました。

<出典:厚生労働省>

短期入所・ショートステイの基準・要件

短期入所・ショートステイの基準・要件について、以下の順番に詳しく説明します。

  • 入居対象者
  • 利用期間
  • 運営基準

入居対象者

短期入所・ショートステイの入居対象者は、以下のとおりです。

  • 身体障がい者
  • 知的障がい者
  • 精神障がい者
  • 難病患者

ただし、身体障害を持つ方において65歳未満の場合は、65歳に達する前日までに障害福祉サービスなどを利用経験があることが条件です。

医療的ケアの必要性により「福祉型」と「医療型」の事業所別に受け入れが行われています。

原則として、居宅における介護者が病気などの事情により、施設に一時的入所しなければならない状況に置かれている障がい者の方が対象です。本人が単身の場合においても、市町村から認定されると利用できます。

短期入所・ショートステイは毎年1回の更新が必要ですが、原則として64歳まで利用可能です。

65歳以降は、障害福祉サービスから介護保険制度を利用することが原則となります。介護保険制度にも短期入所サービスがあるので、引き続き利用可能です。

福祉型の場合

福祉型の短期入所・ショートステイでは、以下の方が利用対象です。

  • 障害支援区分1以上の方
  • 市町村が利用認定した障がい児

主に区分1~3に該当する方が福祉型を利用しています。目安は以下のとおりです。

区分3 食事、排せつ、入浴及び移動のうち3以上の日常生活動作について全介助を必要とする程度、著しい行動障害及び精神症状において、ほぼ毎日(週5日以上の)支援や配慮が必要な程度、またはこれらに準ずる程度。
区分2 食事、排せつ、入浴及び移動のうち3以上の日常生活動作について全介助若しくは一部介助を必要とする程度、行動障害及び精神症状において、週に1 回以上の支援や配慮等が必要な程度、またはこれらに準ずる程度。
区分1 区分3及び区分2に該当しない程度であり、かつ、食事、排せつ、入浴及び移動のうち一以上の日常生活動作について全介助、または一部介助を必要とする程度。

医療型の場合

医療型の短期入所・ショートステイでは、以下に該当する方が利用可能です。

  • 気管切開を伴う人工呼吸器をつけている方
  • 進行性筋萎縮症の方
  • 重症心身障がい者の方
  • 遷延性意識障害を持つ方
  • 筋萎縮性側索硬化症の方

医療型では、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院が実施しています。

対象者は障害支援区分5以上で、市町村から障害福祉サービス受給者証の交付と、短期入所の支給決定を受けている方です。

主なサービス内容は、福祉型同様に食事・入浴のほかに、医療的ケアが含まれています。緊急の治療を必要とする場合は、医療入院に切り替えることも可能です。

<出典:厚生労働省>

利用期間

基本的に短期入所・ショートステイの利用日数に上限はありません。ただし、同じ施設を連続利用する場合は原則30日間になります。

そのため、同じ施設を31日以上の利用を希望する場合は、30日間を区切りに1日以上空けなければなりません。

短期入所・ショートステイでは基本的に1泊2日から利用できますが、日帰りの場合は日中一時支援のサービスが対象になるので、間違えないようにしましょう。

運営基準

短期入所・ショートステイの運営基準は、以下のとおりです。

法人基準
  • 株式会社
  • 合同会社
  • 一般社団法人
  • 特定非営利活動法人
  • 社会福祉法人など
人員配置

①障がい者グループホームと併設型の場合は、両事業所の定員数を合算したときに必要な人員数。

②短期入所・ショートステイのみ単独利用の場合は、入居者6名以下で1名以上、入居者7名~13名で2名以上の人員数。

居室 基本的に障がい者支援施設等の居室で、入居者が利用していないことが原則。
設備

◎単独型の場合
・1室4名以下
・食堂、浴室、洗面所、便所
・非常災害で必要な設備
・1人あたり8㎡以上

◎併設型・空床型の場合
・障がい者支援施設で必要とされる設備

<出典:厚生労働省>

短期入所・ショートステイに必要な運営スタッフ

単独型・空床型・併設型のいずれも共通して必要な運営スタッフは、以下のとおりです。

管理者 管理業務全般を行い、サービス管理責任者や世話人など兼務する場合も。主に費用管理、関係者・保護者との連絡、予約調整、利用者契約、シフト作成を行う。
生活支援員・世話人 入居者の受け入れ対応。食事・入浴・排せつ、連絡調整を行う。

短期入所・ショートステイの併用

基本的に入居施設のサービスは、昼もしくは夜に分かれているため、受けたいサービスの組み合わせが可能です。

サービスを利用する際には、個別支援計画が作成されます。利用者の目的に沿ったサービス提供が行われる流れです。

たとえば、就労支援施設に通所しながら、生活の場として入居施設の利用もできます。

以下の障害福祉サービスの中から選択が可能です。もちろん介護給付と訓練等給付の併用もできます

前提として、市町村から認定を受ける必要があることを覚えておきましょう。

介護給付 居宅介護
重度訪問介護
同行援護
行動援護
重度障がい者等包括支援
短期入所・ショートステイ
療養介護
生活介護
施設入所支援
訓練等給付 自立生活援助
共同生活援助
機能訓練
生活訓練
就労移行支援
就労継続支援(A型)
就労継続支援(B型)
就労定着支援

<出典:厚生労働省>

短期入所・ショートステイの料金

短期入所・ショートステイでは、利用者負担の減免が適用されます。利用者負担の上限額は世帯の収入状況に応じて設定されるため、以下の区分を確認しておきましょう。

生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯 0円
一般1 市町村民税課税世帯 9,300円
一般2 上記以外 37,200円

<出典:厚生労働省>

市町村民税非課税世帯において、3人世帯で障がい者基礎年金1級受給の場合、収入が300万円以下の世帯が対象です。

また、区分が一般1の場合は収入が600万円以下の世帯が対象となります。20歳以上のグループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、一般2の37,200円が上限です。

そのなかで、食費と日用品費などの実費負担があります。具体的には、食材料費・光熱水費・日用品費・レクリエーションの活動費などです。

日用品費については、おむつが該当しますが、トイレットペーパーや石鹸、タオルなどは施設の設備上、必要な共用備品であるため、区分が難しいかもしれません。

しかし、共用の消耗品については基本的に事業者が負担すべきものとすることが多いので、個別の利用を希望する以外は自己負担対象外になります。

施設によって自己負担額が異なるので、料金について確認するようにしましょう。

短期入所・ショートステイの利用方法

短期入所・ショートステイを利用するためには、市町村の窓口に相談しましょう。

そして以下の4つの手続きが必要です。

  1. サービスの利用申請
  2. 障害支援区分の判定
  3. サービス等利用計画の作成
  4. 支給決定と受給者証の受け取り

こちらの手続きが完了するまで、最大2か月はかかります。急いでいる方は早めに手続きを済ませておくことがおすすめです。

受給者証を受け取っても、自動的にサービスが適用されることはありません。短期入所・ショートステイを運営する事業所との契約が必要です。

そのときに必ず受給者証を持参しなければなりません。入居する事業所は自由に選択できます。

初めての方は、複数の事業所を見学してから決めてもいいでしょう。福祉担当窓口で事業所の利用する旨を伝えると、申請書類を作成してもらえます。

まとめ

本記事では、障がい者グループホームにおける短期入所・ショートステイについて解説しました。

基本的に、自宅を生活の場とする障がい者の方を対象としたサービスとなります。用途は家族の予定・休息や、利用者の一人暮らしを想定した練習の場として利用することも多いようです。

また、他の障害福祉サービスとの併用も可能で、短期入所・ショートステイを生活の場として活用しながら、日中活動サービスを受けられます。

料金に関しては、利用者負担制度を利用できるので、生活保護の方もサービス対象者です。

もし、短期入所・ショートステイを利用する場合は、市町村から認定を受ける必要があるため、福祉の窓口で相談するところから始めましょう