幻覚や妄想が出現してしまう統合失調症を持つ方も少なくはありません。また、一緒に暮らす家族にとっては、こういった精神障害の症状への対応に悩むことも。

施設の支援を利用しようと検討中の方も多いようです。手段の1つとして、障がい者グループホームへの入居を考えている方のなかで、以下のような疑問も。

「統合失調症患者でも障がい者グループホームに入れる?」

「統合失調症の症状はどんなものがある?」

そこで本記事では、統合失調症の方でも障がい者グループホームに入れるのかを解説します。

また、統合失調症の症状について把握することで、悩みの解決に繋がるかもしれません。

統合失調症とは?

統合失調症とは、ストレスや何かしらの影響で考えがまとまりづらくなる精神病の1つです。気分や行動、人間関係にも影響を及ぼすこともあります。

統合失調症には、陽性症状と陰性症状と呼ばれる2種類の症状があります。健康であるかないかで表れたり、失ったりするようです。

陽性症状は主に幻覚と妄想です。たとえば、周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴があります。

逆に陰性症状では、生きる意欲の低下や、感情表現が減退することが多いようです。独り言や悪口を言われたように聞こえたり、考えがまとまらずに話が迷走、1人でいることが多くなるサインが現れます。

統合失調症は早めに治療を行うと、回復も早いので迷わずに専門機関に相談することがおすすめです。

統合失調症を持つ家族と暮らす方の悩みとは?

障がい者グループホームに入居を検討している家族のなかには、統合失調症の方もいるでしょう。統合失調症を持つ家族と暮らす方のなかには、生活がしづらい、接し方がわからないといった悩みが多いようです。

そのなかで、統合失調症を始め精神障害に対する社会の偏見が未だに根強く残るため、統合失調症は「不気味な病気」といった間違った認識が広まっています。

同居する家族が世間体を気にすると隠そうとしますが、病気を受け入れていないことになり、本人も存在自体を否定された気持ちになりかねません。

しかし、世間一般の理解のなさにより偏見を生み出しているため、社会全体の問題と捉える必要があります。

統合失調症の治療には時間がかかるので、本人に集中しすぎて消耗してしまうと家庭環境が悪化するリスクも。最悪な事態にならないためにも、社会制度や施設の支援を活用するといいでしょう。

身体障がい者の場合は、生活において困難な状態であることが一見わかりますが、精神障がい者の場合は理解されにくいことがあります。

家族は本人の症状について理解することで、健常者と同じような生活を無理なくできる基準を把握することが大切です。

統合失調症においてサイクルが存在しますが、特に回復期になると健康な状態に戻ると期待しがちですが、本人にとって負担になることも。

家族と同居する際の注意点は、本人に過保護になってしまい、世話をしてもらうことが当たり前になってしまいます。

病気の回復過程の時点から自立をさせるという意識が必要です。病気が治ってからではなく、早めに意識させることも本人の将来のためになるでしょう。

障がい者グループホームに統合失調症の方は入れる?

障がい者グループホームに統合失調症の方は入れるのか気になる方も多いでしょう。結論からいうと、入居は可能です。

障がい者グループホームとは、障害者総合支援法における共同生活援助と呼ばれる事業になります。利用者の多くは、知的障がい者と精神障がい者の方が大半です。

障がい者グループホームでは、3~4人の入居者がスタッフから日常生活の支援を受けながら共同生活を送ります。

入居者の方にとっては、自分の家でありながら、入居者同士で協力して暮らす場所です。日中は就労支援や他の施設に通所したり、食事や入浴も一般の方と同じ生活を行います。

入居者それぞれに個室が与えられており、食堂や風呂場などは共有スペースとして使用することが多いようです。

障がい者グループホームの利用者のなかでも、精神障害を持つ方の割合が知的障がい者よりも上回っているようです。<出典:厚生労働省>

障がい者グループホームの入居対象者は、障害者総合支援法で定義される「障害者」に該当する人です。

もし、障がい者グループホームを利用する場合は、市区町村の担当窓口や通院先の主治医に相談してみましょう。

精神障がい者福祉保健手帳があれば入居可能

精神障がい者が障がい者グループホームなど障害福祉サービスを利用する場合は、精神障がい者福祉保健手帳が必要です。

精神保健福祉法に基づいて、精神疾患や発達障害による日常生活や社会生活への影響で支援が必要になる場合に精神障がい者福祉保健手帳が交付されます。

精神障がい者福祉保健手帳には、1~3級まで等級がわかれており、審査が通ると給付です。

手帳が給付されたら、入居したい施設に見学・申請を行いましょう。

こちらの手帳は2年ごとに更新が必要なので、診断書も提出しなければなりませんが、障害福祉サービスだけでなく、持つメリットは多くあります。

具体的には、以下のようなメリットです。

  • 公共交通機関の運賃割引
  • NHK放送受信料の割引
  • 携帯電話料金の割引
  • 博物館や美術館などの公共施設の入場料割引
  • 医療費の助成(心身障害者医療費助成制度など)
  • 福祉手当の支給や助成、貸付制度の利用
  • 公営住宅の優先入居
  • 税金の控除
  • 障がい者雇用枠で就職可能

逆にデメリットがないので、マイナスに捉える必要はありません。

対象の疾患

精神障がい者福祉保健手帳が交付される方は、以下のような疾患を持っていることが条件です。

  • 統合失調症
  • うつ病・躁うつ病などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物やアルコールによる急性中毒またはその依存症
  • 高次脳機能障害 ・発達障害(自閉症・学習障害・注意欠陥多動性障害など)
  • その他の精神疾患(ストレス関連障害など)

上記の疾患と共に「何らかの精神疾患により、長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある」「その精神疾患による初診から6カ月以上が経っている」ことも手帳取得の条件です。

統合失調症にはどんな症状があるのか?

統合失調症は、幻覚や妄想が特徴的な精神疾患の1つです。100人に1人が発症するといわれているため、意外と身近な病気ともいえます。

症状としては、複雑な情報や刺激に過敏になりすぎると、脳が対応できずに自分の感情や思考がまとまらない状態です。

人間は常に思考する生き物ですが、脳内の精神機能が上手く働かないと感情がわからなくなります。この状態が統合失調症です。

つまり、統合失調症は、脳内のまとめる機能が上手く働かない病気のことをいいます。脳内のなかの不調箇所によって、幻聴や幻覚が現れたり、被害妄想に陥ってしまう症状が出現することで苦しむことも。

統合失調症の症状は主に「陽性症状」「陰性症状」の2種類に分かれるので、それぞれ詳しく説明していきます。

陽性症状

陽性症状は実在しないものが現れる症状です。具体的には、以下のような症状が現れます。

  • 幻覚
  • 妄想
  • 自我意識の障害
  • 思考の障害
  • 行動の異常

1つずつ紹介していきます。

幻覚

幻覚は、実在しないものがあるように感じるため、五感すべてから現れることがあります。幻覚でもっとも多い症状が、実在しない人の声が聞こえる幻聴です。

幻聴では自分に対する悪口や噂、命令などがあります。ほかにも、見えないものが見えたり、臭ったり、味が実際のものと異なることも。

たとえば、身体が歪んでいる、寄生虫がいる、物音がするなどがあります。

幻覚は本人の価値観や関心と関連していることが多く、要因は本人の感情や考えであることがほとんどです。

しかし、本人にとっては現実のことのように認識するため、不安や恐怖になります。

妄想

妄想とは、非現実的なことを信じ込むことをいいます。たとえば、自分の悪口をいっている、誰かに見張られている、だまされているといった被害妄想が代表的です。

また、本人の説明も通常では考えられない理由づけするため、修正が不可能な場合に陥ることもあります。

具体的には「自分のことで話題になっている」「すれ違う人全員が自分を見ている」「誰かに尾行されている」といった被害妄想です。

自我意識の障害

自我意識の障害とは、自分と外の世界とのラインが曖昧になり、周囲の影響を受けやすくなるため、自分が誰かに支配されているような状態です。

具体的には「自分の考えが他人に知られてしまう」「誰かに考えを吹き込まれている」「誰かに操られている」といったことを感じます。

これを「させられ体験」とも呼ばれているようです。

思考の障害

思考の障害は、脳内で考えがまとまらない状態になり、1つの話題からまったく関連性のない話に飛んだり、一貫性のない話になることが多いようです。

会話が成り立たなくなるため、人間関係に支障をきたすことがあります。考えが中断されるので、突然言葉ができないことがほとんどです。

行動の異常

行動の異常では、激しく興奮しながら大声を叫んだり、刺激にまったく反応しないこともあります。

また、目的のない動きや無意味な言葉を繰り返したり、奇妙な身振りをすることも。

指示された姿勢をそのまま保ち続けようとするカタレプシーも見られます。

陰性症状

陰性症状とは、感情表現が乏しくなったり、意欲の減退、思考低下の症状のことをいいます。ほとんどの場合、陽性症状のあとに遅れて現れることが多いようです。

陽性症状のような幻覚や妄想の症状はありませんが、思考や行動の一貫性のなさ、引きこもりだけが生じる場合もあります。

陰性症状では、喜怒哀楽の表現が乏しくなり、他者の感情表現への共感が困難になることも。また、会話中の抽象的な言い回しが使えない、自発的な意欲を失ったり、外部とのコミュニケーションを取らなくなることがあります。

陽性症状といわれる妄想や幻覚のような明らかな症状がなく、単に思考や行動のまとまりのなさ、能率の低下、ひきこもりだけが生じる場合もあります。この症状だけから診断をすることは難しいと考えられます。

感情の鈍麻・平板化

感情の感覚が鈍くなったり、感情表現が乏しくなる平板化により、本来の感情表現が失われます

また、他人と視線を合わせないため、無表情になったり、他人に対する関心が失っているように見えるため、周囲の人が勘違いすることも多いようです。

意欲の減退

意欲の減退が進むと、自発的に目的を持った行動を始めたり、根気よく継続することが難しくなります。

勉強や仕事に対しても意欲が湧かないので、周囲に関心を示さなくなることも。また、集中力が低下するため、一度に複数の物事の処理が困難になります。

思考の低下

思考力の低下により、コミュニケーションの量が激減するようになります。

話しかけても、短い返事だったり、まったく答えられないことも多いようです。

対人コミュニケーションの支障

コミュニケーションの場面では、他人との関わりを避けるため、引きこもる生活になることが多いようです。

ほとんどの場合は、一日中何もすることなく、ぼんやり過ごすため社会性が低下します。

認知機能障害

陽性症状と陰性症状のほかにも、認知機能障害と呼ばれる症状があります。認知機能とは、記憶や思考などの知的能力のことです。
統合失調症では、認知機能の障害が多く見られるため、生活・社会活動全般に支障をきたします。

また、物事を覚えることに多くの時間がかかる「記憶力の低下」や、目の前の仕事や勉強に集中できなくなったり、考えがまとまらなくなる「注意・集中力の低下」、物事の優先順位がつけられない「判断力の低下」が生じることがあるようです。

選択的注意の低下

周囲の情報や刺激に対して、必要なことだけに意識集中が難しくなるので、注意散漫になることがあります。

たとえば、会話中に周囲の動きや物音にとらわれて、落ち着きがなくなる状態になるようです。

比較照合の低下

物事の比較照合が低下すると、過去の記憶を照合することができないため、部分的にしか集中できないことがあります。

逆に全体を把握できないので、間違った思い込みであることに気づかないことも。

また、言葉に隠された意味や例えの理解ができないこともあります。

概念形成の低下

さまざまな情報に対して、物事を概念化する機能が低下すると、類似点と相違点の区別ができなくなることがあります。

具体的には、衣類を指定の場所に収納するといった整理整頓ができない、手順に従って料理ができないなどです。

統合失調症の種類

統合失調症には、解体型・緊張型・妄想型の3種類があります。

それぞれ順番に解説します。

解体型

解体型は、意識低下や感情の平板化が主な症状です。思春期から青年期にかけて発病することが多いので、破瓜(はか)型とも呼ばれています。

具体的には、最初に感情の起伏がなくなり、意欲減退などの陰性症状が現れたあとに陽性症状が発症するようです。

陽性症状が出てしまうと、人柄が変わってしまうため、久しぶりに会った人からすると大きな変化に見えることも。

慢性的に症状が続くため、回復するまで長期的な目線が必要です。

緊張型

緊張型は、極度の緊張や奇妙な行動が特徴です。青年期に発病する場合が多く、大声で叫んだり、奇妙な姿勢を取る緊張病症候群が発症します。

ほとんどの場合は数ヵ月で消滅しますが、再発するごとに解体型に類似した症状に変化することも。

緊急型においても、20歳前後に発症するため、激しい興奮状態と周囲に対する反応が鈍くなる状態が現れます。

一定期間を過ぎると、症状は治まりますが、治療を中断すると再発することがあるようです。

妄想型

妄想型は、幻覚や妄想が中心の症状です。解体型や緊張型よりも発症年齢が遅く、30歳前後に発病します。

妄想型とはいえども、陰性症状が発症することは少ないようです。一定期間、妄想型の症状が落ち着くと、対人コミュニケーションにおいては比較的良好に維持されている場合があります。

また、周囲の人からは病気と思われないケースが多いため、幻覚や妄想以外の目立った症状が見られません

統合失調症における4つのステージ

統合失調症には、前兆期・急性期・休息期・回復期の4つのステージが存在します。それぞれ症状が異なりますが、休息期・回復期に症状を誘発するようなストレスがかかると、再び急性期に逆戻りすることもあるようです。

再発が繰り返されると、休息・回復に必要な期間が延長するといわれています。統合失調症は、治療効果が高い薬剤が開発されているため、早期治療が進み、普通の日常生活を送る人がほとんどです。

しかし、陽性症状が発症すると日常生活が制限されます。適切な治療を継続することで、再発率が低下するようです。

具体的な治療方法は専門機関に詳しく聞いてみるといいでしょう。

前兆期

前兆期は、特に目立った症状はありませんが、睡眠不足でイライラしたり集中力が低下することがあります。

発症の前兆として、眠れなくなったり、物音に敏感になったり、焦りが強くなることが多いようです。本人も周囲の人も気づかない場合が多くあります。

これらの症状は鬱病や気分障害と類似しているため、統合失調症と診断されにくいことも。

また、食欲低下や頭痛などの自律神経の症状が見られたら、専門機関に相談することがおすすめです。

急性期

急性期には、幻覚や妄想を体験することが多いようです。自分のなかで違和感があっても、他人から見ると奇妙な行動を取ることがあります。

さらに、周りの出来事に過敏になるため、不安や緊張を強く感じることもあるようです。急性期には、幻覚や妄想で脳内が混乱し、周囲とのコミュニケーションが困難になります。

消耗期

消耗期になると、幻覚や妄想が減少しますが、意欲が低下します。急性期に心身のエネルギーを多く消費してしまったことが原因です。

起伏が激しい急性期を過ぎると、感情表現が乏しくなり、無気力状態が中心の陰性症状がメインの消耗期に入ります。

しかし、少しの刺激が原因で急性期に逆戻りしやすい時期です。この期間は不安定な精神状態なので、焦らずに治療に専念しましょう。

回復期

回復期になると、徐々に心身も安定するので元気になります。しかし、再発のリスクもあるため、薬は服用を継続することがおすすめです。

認知機能障害が現れる場合も予測しておかなければ、日常生活に支障や社会性の低下を招く場合もあります。

周囲からは回復したように見えても、本人は疲労感や意欲低下を感じながら、今後の不安や焦りを覚えることが多いようです。

まとめ

本記事では、障がい者グループホームと統合失調症の方について解説しました。統合失調症は精神障害の1つになるため、精神障がい者福祉保健手帳を市区町村の担当窓口で交付が可能です。

手帳があれば、障がい者グループホームはもちろん、障害福祉サービスや公共料金の割引適用などの対象になります。

また、統合失調症には3つの種類と4つのステージがあり、それぞれの症状は異なるため、本人の症状から判断する目安にするといいでしょう。

症状が回復に進んだとしても、少しの刺激で逆戻りになる可能性があります。なるべく穏やかな環境のなかで、治療に専念すると早期回復に繋がるでしょう。