「私たちが元気なうちはいいけれど、この子は将来どこで暮らすのだろう」
障がいのあるお子さんを支えてきたご家族にとって、「親亡き後」は簡単には答えの出ない大きな心配の一つです。
住まいだけではありません。食事や洗濯はどうするのか。薬はきちんと飲めるのか。困ったときに誰へ相談するのか。お金を管理できるのか。体調を崩したらどうするのか。
長年、ご家族が担ってきたことが多いほど、「自分たちが支えられなくなったら」と考えたときの不安は大きくなります。
しかし、親亡き後の準備は、親がいなくなった後の行き先を決めることだけではありません。
ご本人が家族以外の人ともつながり、自分らしい生活を少しずつつくっていくこと。
その選択肢の一つが障がい者グループホームです。
厚生労働省も、障がい者の重度化・高齢化や「親亡き後」を見据え、障がいのある方の生活を地域全体で支える体制づくりを進めています。
この記事では、名古屋市周辺で障がい者グループホームを運営する「たろちゃんち」の考え方を交えながら、親亡き後の住まいと、今から始められる準備について解説します。
親亡き後が心配になるのは「住む場所」だけではありません

「親亡き後」と聞くと、まず「この子はどこに住むのだろう」と考える方が多いでしょう。しかし、実際に考えておきたいのは住居だけではありません。
これまでご家族が食事を準備し、洗濯をし、通院に付き添い、行政から届いた書類を確認し、お金の管理を手伝い、本人が困ったときには相談相手になってきた家庭もあります。
つまり、ご家族が担っている役割そのものを整理することが大切です。
「一人でできることは何か」「声をかければできることは何か」「誰かの支援が必要なことは何か」を確認していくと、将来必要になる支援が少しずつ見えてきます。
そして、親亡き後を考えるうえで重要なのが、ご家族が支えられなくなるその日まで、今とまったく同じ生活を続けることだけを前提にしないことです。
環境が突然大きく変わることは、ご本人にとって負担になる場合があります。
だからこそ、ご家族が元気なうちから相談支援事業所などとつながり、グループホームを見学したり、可能であれば体験利用をしたりしながら、家族以外の人から支援を受ける経験を少しずつ積んでいくという考え方があります。
厚生労働省が進める地域生活支援拠点等も、「親亡き後」への備えだけでなく、親元からグループホームや一人暮らしなどへ移行しやすくするため、相談や体験の機会、緊急時の受け入れなどを地域で整備する仕組みです。
名古屋市でも、親元からの自立に向けてグループホームを体験する仕組みが設けられています。
親亡き後の準備は、「親がいなくなった後」の話だけではありません。
親子がともに元気な今から、本人の将来の暮らしを一緒につくっていくことなのです。
たろちゃんちで考える「家族だけに頼らない暮らし」

共同生活援助、いわゆる障がい者グループホームは、障がいのある方が共同生活を行う住居で、相談や食事、入浴など必要な日常生活上の援助を受けながら暮らす障害福祉サービスです。
障がい者グループホーム たろちゃんちが目指しているのは、単に「親に代わって何でもしてくれる場所」ではありません。
たろちゃんちは、障がいのある方が安心して生活しながら、その人らしい暮らしと自立を目指すための場所でありたいと考えています。
例えば、洗濯が一人でできる方であれば、自分で取り組む。準備の順番が分からない方には、スタッフが声をかけたり一緒に確認したりする。生活リズムを整えることが難しい方には、一人ひとりの状態を見ながら必要な支援を考える。
すべての利用者さんに同じことをしてもらうのではありません。
たろちゃんちが大切にしているのは、「できないことをすべて代わりに行う」のではなく、「できることを増やすために支える」ことです。
親亡き後を考える場合、この考え方はとても重要です。
ご家族が元気なうちは、つい先回りして手伝いたくなることがあります。しかし、少し時間がかかっても本人が自分でできることを増やしたり、「困った」と家族以外の人へ伝えられるようになったりすることも、将来の暮らしにつながります。
また、家族以外との関係をつくることも大切です。
グループホームのスタッフ、相談支援専門員、日中活動先、医療機関、行政など、地域には本人の生活を支えるさまざまな人や機関があります。
名古屋市でも、障害者基幹相談支援センターを中心に、地域生活支援拠点事業所や障害福祉サービス事業所などが連携し、障がいのある方の地域生活を支える体制づくりが進められています。
「家族だけで支える生活」から、「地域の人たちともつながりながら暮らす生活」へ。
たろちゃんちは、その移行を少しずつ進められる生活の場を目指しています。
親が元気な今から始めたい「できることを増やす」準備

親亡き後への備えというと、「グループホームを探して契約しておけば安心」と考えてしまうかもしれません。
しかし、本当に大切なのは住む場所を決めることだけではありません。
新しい環境で生活するためには、家族以外の人から支援を受けること、自分の希望を伝えること、自分でできることに取り組むことなど、さまざまな経験が必要になります。
例えば、朝起きて身支度をする。洗濯物を片づける。翌日の持ち物を準備する。自分のお金を意識する。体調が悪いときに誰かへ伝える。
最初から全部できる必要はありません。
「声をかけてもらえばできる」「一緒に確認すればできる」「手順が分かれば一人でできる」ということも、その人の大切な力です。
たろちゃんちでは、生活リズム、家事、コミュニケーションなど、一人ひとりの状態や目標に合わせた支援を大切にしています。
そして、ご本人の希望も重要です。
親亡き後の不安が大きくなるほど、ご家族側の「この子のためにこうしておきたい」という思いが先行することがあります。しかし、実際にそこで生活するのはご本人です。
どんな部屋が落ち着くのか。休日はどう過ごしたいのか。一人の時間はどのくらい必要なのか。何が苦手なのか。どんなことなら自分でやってみたいのか。
こうした本人の希望を確認しながら、暮らしを考えていく必要があります。
そのためにも、ホームページだけで入居先を決めるのではなく、実際に見学し、可能であれば体験利用などを通じて本人との相性を確認することが大切です。
名古屋市の地域生活支援拠点事業にも、親元からの自立に向けたグループホーム体験の仕組みがあります。
親亡き後への準備は、一度に完成させる必要はありません。
できることを一つ増やす。家族以外に相談できる人を一人増やす。暮らせる場所を一つ知る。
その積み重ねが、ご本人とご家族双方の安心につながっていきます。
たろちゃんちでは見学・相談を受け付けています。「まだ入居は先だけれど、将来のために見ておきたい」という段階からご相談いただけます。
グループホームを見学して「親亡き後」を具体的な暮らしに変える

親亡き後について考えていても、実際の生活を見たことがなければ、「グループホームで暮らす」ということを具体的に想像するのは難しいものです。
だからこそ、最初の一歩としておすすめしたいのが見学です。
見学では居室やリビングを見るだけではなく、食事はどうしているのか、夜間はどのような支援体制なのか、服薬や通院はどうするのか、休日はどのように過ごすのか、困ったときは誰に相談するのかなど、実際の生活を想定して確認してみてください。
そして、今ご家族が行っている支援を書き出して持っていくと、より具体的な相談ができます。
「朝は3回声をかけている」「お金は家族が管理している」「病院には母親が付き添っている」「予定変更が苦手」といった日常の情報は、将来必要になる支援を考えるうえで重要です。
たろちゃんちでは、ご本人の生活リズムや希望、得意なこと、苦手なことなどを確認しながら、その方に合った暮らしを一緒に考えていきます。
すぐに入居することだけが見学の目的ではありません。
「将来、ここで暮らせそうか」を本人と家族が考えるための時間として見学を活用してください。
施設の雰囲気を実際に確認する。ご本人に合う環境か相談する。必要に応じて体験利用について確認する。
親亡き後という漠然とした不安を、「本人がどんな暮らしをしていくか」という具体的な準備へ変えていくことが、最初の一歩になります。
親亡き後ではなく「本人のこれから」を今から考える

親亡き後への備えは、親がいなくなる日のためだけの準備ではありません。ご本人が自分らしく暮らせる未来を、家族が元気な今から一緒につくることです。将来への不安を一人で抱えず、まずはたろちゃんちへ見学・相談にお越しください。